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2010年3月15日月曜日

早川先生(8):子育てについて考えること

b>早川:私は将来の夢をいくつかもっていますが、その一つが「今の時代に合った育児支援をしていくこと」です。それが本を書くことなのか、インターネットなのか、意見交換の場なのかは、まだわかりませんが。ひと昔前は「スポック博士の育児書」など、有名なものがいくつかありましたが、どうしても内容が古くなっていると思うんです。今みたいに複雑な時代だと、単純にこどもの発達を取り上げるだけではなく、親のこころの問題、経済的な問題、社会の問題などにも目を配らないといけないですし、新しいことがどんどんわかってきていますからそれにも対応しないといけない。

上原:確かに、こどもが減って、育児が昔と今では、まったく何か違うもののようになってきていますよね。

早川:私は、小児科から独立して、もっと総合的に子育てについてフォローする領域が誕生すべきでないかと考えています。教育学、発達心理学など、子育てに関連する学問領域はいろいろありますから、それらの学問を総合して「育児学」というものを作ってもよいのではないでしょうか。あと育児に関しては、何か独立した一つの職種があってもいいのではないでしょうか。保母さんや学校の先生、あるいは小児科医というのではなくて、育児やこどもの発達についてアドバイスできる専門性を持った職業があると、すごくよいと思うんですけどねえ。

上原:すばらしいお考えですね。新しい子育て、小児医療の世界で実現したいとお考えのことで、何か具体的なことはありますか?

早川:私は「東洋医学の考え方」を取り入れたいと考えています。東洋医学は人間を自然の一部として捉え、自然治癒力を重視します。また病気のみではなく、その人を包む環境や身体のバランスを見ます。たとえば、東洋医学には「医食同源」という言葉がありますが、これは「病気の治療も日々の食事も身体にとっての重要性は同じであり、薬を飲まなくても食事をきちんとすれば病気が治ることもある」という考え方です。東洋医学が自然治癒力を大事にし、一部分だけでなく全体を見ようとしていることがわかると思います。
一方で、こどもというのはとても自然な存在ですよね。それが大人になるにしたがって文明に感化されて人工的な存在になっていくわけですが、一方でこどもは自然の一部のようなところがある。だからこそ自然の影響を強く受けてしまい、例えば冬期や季節の変わり目には風邪になるこどもが増えたりします。私たちは「小児科医は季節労働者」なんてよく言うのですが、夏と冬では患児の数が倍以上も違ってきます。だから、大人よりも自然な存在であるこどもにこそ、東洋医学は適すると私は思うんです。そして私が考えているのは、「漢方薬をもっと使おう」ということではなく、「東洋医学的な観点から、こども達の暮らす生活に光を当てていこうよ」ということです。東洋医学には「未病を治す(病気になる前に身体の異常に気づいてバランスを建て直し、病気になるのを防いでしまおう、という考え方)」という言葉もありますが、まさにそんな感じで育児にアプローチして行きたい。その方が、社会的にも馴染み易いのではないでしょうか。
それに、そもそもこどもは薬の副作用も出やすいので、人工的な産物である西洋薬やさらには漢方薬より、食事や生活習慣の改善で治療できれば、それに越したことはないんですね。そうやって見てみると、今まで小児科領域で東洋医学があまり重視されてこなかったのが不思議なくらいです。

上原:先生は、小児精神科を目指されていますよね?

早川:はい。今は精神科で勉強していますが、来年は児童精神科に移る予定です。
私は、こどもの心を捉える上でも東洋医学の考え方は有効なのではと思うんです。たとえば不登校の子を診る時も、東洋医学的に考えるならば、自然とその子の生活環境や食べものなど全体を見ることになる。その中でバランスの悪い部分がどこなのか、“自然”からずれている部分はどこなのかを見ていくことになる。また、脈を診たり舌を診たりといった東洋医学的な診察からも、生活の中でどういうことが起きているのか、いろいろなヒントをつかむことができる。
もちろん、これまでの小児精神科の見方・考え方はすごく大事です。そもそも私は現場にまだ立っていないわけですから、外から見てそう思っているに過ぎません。ただ、まるっきり視点を変えた東洋医学的な見方も有効ではないか思うんです。来年はぜひ、それを試していきたいと思っています。

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