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2010年3月16日火曜日

医療とお金について考えてみる

こんばんわ。早川です。
私の投稿に関して、大森さん、上原さんから投稿していただきましたから、私もわかる範囲でそれに応えていこうと思います。ただ、私はあくまで臨床医で、制度的なところはちょっとあいまいな記述になってしまうのはご容赦ください。まず大森さんの投稿ですが、医療体制の問題や日本の将来の話など、私も同感です。大森さんや上原さんとは仕事の分野は大きく異なりますが、考え方がとても重なるので「うんうん。そうだそうだ」とうなずくところが多いようです。「異分野の志を同じくする仲間」って、とても大事だと思います。改めてそんなことを感じました。大森さんが提起されたことは一つ一つ重要なことで、私自身いろいろ思うことはあるのですが、今回は大森さん、上原さんの両方から提起された「医療とお金」のことに絞って考えてみたいと思います。

まず、上原さんの質問に答えていきましょう。
医療費=診療報酬 と考えてよいと思うのですが、これについてWikipediaに書いてあるとおり、中央社会保険医療協議会という厚生労働省の協議会が決定します(その構成委員20人の名簿も載っています)。日本は国民皆保険制度ですから、自由診療を受けない限り医療費はこの協議会の決めた診療報酬点数どおりに決まることになります。同じ治療を受けても支払う金額が違うのは、病院と診療所で微妙に診察料が違っていたり、使う薬の薬価が違ったりなどするからです。この辺りはこれまでは患者さんたちはわからなかったわけですが、この4月から詳細な明細書(病院の詳しいレシートのようなものです)を渡すことになりましたので、4月以降に受診された方はすでに手にされたかもしれません。実はこれはとても大きな変化で、今後は勝手に不必要な検査などをされていればすぐにわかってしまうことになります。

次に医師の報酬ですが、これは全国一律に決まっているものではありません。公立病院は、法令で金額が定められています(ふつうは「医師になって何年目か」で決まります)が、これも県毎に違います。民間はそれこそまちまちです。科によっても違っていたりします。無医村などでは、都会では考えらないような高い報酬を提示して医師を求めたりしていますが、それでも医師が来てくれない、などという話はよく聞きます。最近では医師向けの転職サイトなどもありますが、中身は医師でなくとも見られるので見ていただくとよいと思います。

医者の報酬の問題は、いろいろな側面を持っているので、いくつか指摘してみますので考えてみてください。

1、医者のモチベーションはお金だけじゃない

お金のためだけに仕事をしているわけではない――というのは、どの仕事でも同じだと思います。医者は特に人から尊敬される仕事ですし、そういうモチベーションは高いです。そもそもが高所得を保証されているようなところもあります。ただ、自分の半分くらいしか大変ではない仕事をしている人が、自分の何倍も給料をもらっていたとしたらどうでしょうか?しかもその状態がこれからもずっと続くとしたら。やっぱりラクな仕事に移りたくなるのが人情ではないでしょうか。また、お金が大事か、仕事の充実が大事かといったことは、個人差もあるでしょう。

僻地でお金を出しても人が集まらないのは、この仕事がお金だけではない面を示していると思います。厳しい言い方になりますが、高い報酬を出して医師を呼ぼうとすれば、お金を大事にする医師が集まります。そういう人が十分に熱意があるかどうかは疑問でしょう。以前、NHKの「ご近所の底力」という番組で「かかりつけ医がほしい」という特集を組んでいました。ここでは、無医村で村民一体となって取り組むことで、医師がまた来てくれることになったということが取り上げられていました。僻地で働く医師が求めるのは、報酬よりもやりがいでしょう。そのためには、その地域の方々がどのような意識をもっているかが重要ではないかと思うのです。

2、高い報酬ゆえの高い要求

「高い給料もらってるんだから、これくらいして当然だろ」――これは時々患者さんに言われることです。落ち着いた状態ではあまり言われませんが、イライラしてくるとおっしゃいますから、ひょっとすると心の中でそう感じている方は案外多いのではないかと思っています。確かに、平均所得よりは多い金額を私たちはもらっています。しかし、スポーツ選手のような額ではありません。以前、何かの調査でありましたが、普通に勤務医をした場合、銀行に勤めるサラリーマンの方が生涯獲得賃金は多いようです。成功した開業医や、一部の特殊技能を持つ医師の報酬はかなり高い。しかし、ふつうの勤務医はみなさんが思われるほどではないんです。ただ医師の報酬は、プロフェッショナルとしての誇りが維持されるだけの高額でなければならないですし、医師の側もその報酬の高さに応えよう、という意識にならなければ、高い医療水準は維持できないと思います。

3、サービス業?公共の仕事?

医師の仕事はサービス業なのか――これが一番お話したいことです。
実際、今の日本の医療では、サービス業的な面を持つ医師が高い報酬をもらっているように思えます。小児救急でも、公共の仕事的である二次、三次救急よりも、サービス業的な一時救急の給料のほうが高いのが現実です。残念ながら、日本は他の分野でもサービス業優位のように思えます。確かに、医師にはサービス業的な仕事もできる面もあると思います。それも重要なことなのでしょう。しかし、そちらばかり評価してほしくはないんです。医師の仕事の本質はサービス業ではないと思うから。医師の仕事は、人の命を守るという、社会のライフラインの一つだと思うのです。私は、医師の報酬は、診療報酬大系のように一律に決まっていてよいのではないかと思います。今は、医療の分野、民間公立で偏りが大きすぎているように思います。「報酬が同じでは必要なところに人が集まらない」――ならば、診療報酬のように必要な分野の点数を高くすればよい。なによりも、仕事を金額ではなく、面白さで選ぶようになってほしいと思います。特に若い医者は純粋なところがありますから、金額が変わらなければ面白さで選ぶのではないでしょうか。医師の報酬については、大森さん、上原さんのご意見もうかがってみたいものです。

最後に、医療とお金について、一つヒントのようなお話をしておきます。
イギリスの話ですが、イギリスでは医療費をどの分野にかけるかは、地域の保健所のような機関に委ねられているようです。地域ごとに、予防医療にお金をかけたり、高齢者医療にお金をかけたり、いろいろしている。そして、国民は基本的にその地域で医療を受けるしかないから、どのような医療制度をその地域が選択するのかに、みな関心が高いようです。すみません、専門家ではないので詳細はわかりません。ただ、地域ごとに医療制度を選択できたら、関心も高まるのになあと思ってしまうのです。日本でも保健所がその地域でなにに医療費をかけるかを決められるとしたら、保健所長を選ぶのに選挙が必要になるでしょう。最近、後期高齢者医療制度の問題が取りざたされてますが、これも国民が「どうせ厚生労働省が決めることだから、自分たちが考えても仕方ないよ」と無関心になってしまったことに根っこがある気がします。やはり、これだけ民度が高まっている国で、中央集権が強すぎるのはよくないのではないでしょうか。

もっとみんなが自分の問題として考えられるためには、ある程度小さな規模の行政府が必要だと思います。

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