さて、5回にわたって掲載してきた「小児医療の論点」もいよいよ最終回です。「小児救急を受ける側の問題点」<その3>として、お送りします。
ここにもう一つの問題があります。「小児医療の無料化」の問題です。夜間の救急受診を増やすもう一つの問題がこれです。そしてこれは"美談"として語られがちなので危険なんです。小児医療が無料だとあたかも子どもを大事にしているように見えます。今やそれは規定路線のように語られていることが多い。しかし、小児科の現場では反対の意思を持っている医者は決して少なくないと思います。それは単純に「これ以上仕事が増えたら小児科医を辞めるしかない!!」というものです。以前、高齢者医療が無料化したときも、有権者へのアピール的な面が強かったと聞いたことがあります。
おそらく今は、高齢者はさすがに増えすぎて無料化を続ければ財政が破綻しかねないので中止
になったのだと思いますが、代わって小児医療が対象になっているように思います。しかし、高齢者医療の無料化は、はたしてよかったのでしょうか?私には、質の低下と、不必要な受診を招くだけに思えて仕方ありません。夜間はむしろ、昼間よりも高く設定すべきだと思います。そしてそのお金を本当に大事な二次、三次救急の充実に回していただきたい。そしてもう一つ、育児力を挙げる取り組みにもお金を回してほしい。
具体的に私が提案したいことが一つあります。夜間の小児向けの訪問看護です。最近、訪問看護ステーションは各地に充実してきていますが、小児向けの訪問看護を夜間中心に行っていくのはどうでしょうか?訪問であれば休んでいる子どもを起こして連れて行く必要もない。また、育児力を高めるための話を聞くこともできます。現在の小児科一次救急は、医師の判断を必要とするレベルのものは少なく、看護師が十分判断できるものです。むしろ、経験の浅い医師よりも、育児経験なども含めた意味で経験豊富な看護師のほうが、ずっと適任でしょう。医学よりも、看護が貢献できる領域です。
そして、ここを強調したいのですが、かならず有料で行ってほしいのです。行政サービスとして重要なのは、「希望をすれば必ずサービスが享受できること」で無料化ではありません。無料化すれば不必要な利用も増え、必ず質は落ちてしまいます。行政にはサービスの普及にこそ、お金を使ってほしい。正しいことに取り組む人たちが報われるように、インテンシブをきちんとつけてほしい。小児科救急と違い医師を必要としませんから、各地域に設けることもできます。コスト的にもよいでしょう。
医者はつい「何でもしなければいけない」と思いがちです。「医者の万能感」なんて呼びますが、患者さんの前で自信のない顔ができないからということで知ったかぶりをしがちですし、患者さんも医者に万能を期待しがちです。しかし、一人の人間が何でもできるわけがないですし、本来医者がすべきこと以上のことをしていれば医者不足になるのは当たり前なんです。このようになっているのは、日本において医療の地位が異常に高かったためなのでしょうが、最近は徐々に地位も低下してきて、適切なところに近づいていると思います。やはり、看護や教育のテリトリーを尊重しながら連携していくのがこれから必要なことだと思います。
小児医療についていろいろな話をしてきました。まだまだ話すべきことはありますが、この辺りでおしまいにしたいと思いますが、最後に一言言わせていただくと、今の親御さんの世代--30代は忙しすぎます!! 少子化担当大臣にはぜひこの辺りを検討していただきたいと思います。子どものすばらしさを伝えようとか、出産の無料化などを進めているようですが、親御さんたちが子どもを持つことのすばらしいことがわかっていないなんてことはないと思うんです。少子化の原因は「とても忙しくて子どもを育てる余裕がない」「教育費もかかるし、日本の将来が不透明で先行きが心配…」といったことではないでしょうか。あるお母さんは「日本の将来が心配で、生まれてきても苦労しそうだから、子どもの将来を考えると自信を持って生む気になれない」とおっしゃっていました。親御さんが余裕を持って楽しく育児ができるような社会作りを、みんなで目指していきたいですね。
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